この冬は本格ホラー映画『ドント・ブリーズ』で凍り付こう
息もできない怖さとは?
『ドント・ブリーズ』というタイトルは日本語に訳すと「息をしてはいけない」という意味になるが、まさにそのままの映画だ。
映画の冒頭、若者3人がお金持ちそうな家に盗みに入る。
警報装置はあるが、彼らのうち白人男性のアレックスはその警報システムの盲点を熟知していて、入って30秒以内に警報をオフにすると警察に連絡が行かないことが分かっている。
彼らは鮮やかな手際で盗みに成功する。
若者は黒人男性一人と白人の男女の3人組だが、軽いノリで盗みをしている黒人男性マニーとは対称的に、若い女ロッキーは少々複雑な家庭状況を抱えている。
彼女が盗みをするのは、貧困のせいで完全に家庭崩壊した家族のもとからまだ子供の妹を助け出し、カリフォルニアに移住するためなのだ。
盗品を売りさばいた時、黒人のマニーはある貴重な情報を耳にする。
あるゴーストタウンに住む老人、しかもイラク戦争で負傷し全盲となった老人が、自分の家に30万ドル(3千万円以上に相当)もの大金を隠しているという情報だ。
これはどう考えてもボーナスステージじゃないか!
当然マニーはノリノリでこの話に飛びつく。
ロッキーもすぐこの話に飛びつく、「これで大金をつかめばすぐさまカリフォルニアに移住できるわ」ってわけだ。
でもアレックスはしぶる。
彼は慎重な人間で、盗みをする時も1万ドル以上は盗まないという方針をとっている(1万ドル以上の窃盗は重盗罪になり最高10年の懲役刑が科せられるらしい)。
しかしロッキーにひそかに恋心を抱くアレックスはロッキーの願いを無視することはできず、しぶしぶこの盗みに乗ることにする。
つけっぱなしのテレビに映る少女?
いつものように下見をし、入念に準備されたおかげで、仕事は首尾よく進む。
獰猛な飼い犬は睡眠薬を入れられたエサで眠らされ、家の中に忍び込み、家主を眠らせるためにマニーは階段を上り、盲目の家主の部屋に入る。
廊下を歩くと幼い女の子の声が聞こえる。
「あれ? 誰かいるのか?」と思うが、家主が寝ている寝室に入るとテレビからの声であることが分かる。
テレビ画面には幼い女の子が移っている。
どうやら家主の男に話しかけているらしい随分前に撮影されたビデオ映像だ。
事前の情報で分かっていたのだが、この家主には昔一人娘がいた。
だがその娘は交通事故で命を落とした。
失意の男はその後もその家で一人住み続けているのだ。
周りには人気のない空き家ばかりだというのに。
マニーが男の部屋に入ると、男がベッドで寝ている。
次の瞬間、男が急に起き上がった!
黒人のマニーはハッとして身構える。
戦いの幕開けか?
しかし男はただテレビのスイッチを消すために起き上がっただけだった。
スイッチを消すとすぐにまた寝てしまった。
マニーは催眠薬を部屋に散布する。
これで男は深い眠りにつくはずだ。
ここまでは完璧だった。
ところがそううまくいくわけがない。
3人がこの盲目の退役軍人から30万ドル盗んで、マニーは毎晩キャバクラで豪遊し、ロッキーは幼い妹を連れてカリフォルニアに移住し、アレックスも彼女についてカリフォルニアに行き大学でビジネスでも勉強し、事業を立ち上げ大成功しました、なんてストーリーになるわけがない。
そんな話誰も望んでいない。
盲目で年老いた退役軍人っていうと、一見憐れむべき人のように思われるかもしれない。
でもこの老人は違う。
彼は不死身の肉体を持っている。
まるでランボーかプレデターのように。
いやチャック・ノリスか、スティーブン・セガールのように。
本当に怖いものとは?
物語が進んでいくと、いつの間にか我々は、どうも憎めない3人組の窃盗団を憐れんでいることに気づく。
おいおい、頑張れ!負けるな!気を抜くな!
相手はヒョードル並みに強いぞ!
お前らはヒョードルvsノゲイラ見たことないのか?
Youtubeで見ろ!
あれを見て対策をしろ!
絶対マウントは取らせるな!
これ以上はネタバレになるので、もう何も言わないが、とにかくこのホラーは見る価値がある。
何が怖いって、この盲目の老人は、自分の○○を○○保存するほどの怖いやつなのだ。
しかも自分の娘を事故で殺した○○を○○して、○○に○○するというとんでもないサイコパスなのだ!
不死身の肉体を持つ男に追い回されるのは怖い。
でももっと怖いのは、サイコパス的な壊れた人間の精神だ!
この映画を観て、ヒョードルの氷のように冷たい眼を思い出した。
ヒョードルのあの眼を見ると、こいつきっと何人か人殺しているのだろうなと思ってしまう。
マウントになって相手の上に馬乗りになり、相手の顔面を拳で殴り続けるヒョードル。
普通の人間にはあんなこと出来ない。
拳の威力はマットの上にある相手の頭部にもろに伝わる。
相手が受け身を全くとれない中、顔面を殴り続けるヒョードル。
この映画の退役軍人の老人はまさにヒョードルだ!
しかも自分の○○を○○保存するヒョードルだ。
ヒョードルよりたちが悪いじゃないか!
ヒョードルだってそんなことしていないはずだ。
いや、もしかするとしているかもしれない。
ヒョードルならしかねない気もする。
とにかく『ドント・ブリーズ』は肉体と精神の恐ろしさを知りたい方にはぜひおススメの映画だ。