西部劇『マグニフィセント・セブン』は大当たり娯楽作だ
正月早々僕はアメリカへ向かう機上にいた。
もともと飛行機は大嫌いだ。
あの乾燥して鼻の粘膜がヒリヒリするのも、まずい機内食も、座席備え付けの小さなディスプレイも、汚くて狭いトイレも、そして何よりも狭苦しくお尻が痛くなる座席が大嫌いだ。
余りにも不快なせいで映画なんて見る気もしない。
だからだいたい持参したニンテンドー3DSでモンハンなんかをして時間をつぶしている。
そんな機上映画嫌いな僕がついつい最後まで観てしまった映画が『マグニフィセント・セブン』だった!
この映画にはもともと興味があった。
昨年末にたしか『ローグワン』を観に行った時に予告編が流れていたのを見て、すぐさま名作の予感がした。
こういう名作センサーってのは案外当たっていることが多い。
だから機上で映画を選択して『マグニフィセント・セブン』があるのを見て、とりあえず選択してしまった。
あれ?日本語字幕がない?
残念ながらアメリカン航空の映画には日本語字幕バージョンはなかった。
しかたなく英語で観る。
冒頭の悪者たちが善良な人々が住む町をのっとってしまうシーンを見て、この作品が間違いなく名作であることを悟ってしまう。
普段であれば、機上で映画を観始めても、しばらくすると眠くなったりしんどくなったりして途中でやめてしまう。
だが今回は違った。
どんどん引き込まれていった。
しかしつらいのは日本語字幕がないことで、英語だけで理解するには少々難しい箇所も多く、正確にストーリーを追うこともできなくなっていった。
それで、気がつくとすっかり眠りに落ちていた。
アメリカで要件を済ませ、帰国便のJALに乗った時、もう一度チャンスは訪れた。
しかもJALだけあって、日本語字幕付きのバージョンで『マグニフィセント・セブン』が視聴可だったのだ。
これは見るしかないと思い、すぐに選択した。
あっという間の2時間だった。
帰国便の航行時間13時間のうち、2時間を苦もなく消化できたのはこの上ない喜びだった。
この映画はシブい男たちであふれている。
しかも僕が好きな古い時代の男の美学が描かれている。
ひたすら力が支配する世界における闘争、そして男同士の友情が描かれている。
デンゼル・ワシントン演じる賞金稼ぎサムはハードボイルドの真骨頂って感じのタフガイで、しかもとてつもないガンマンでありながら正義を貫く心を持っている。
イーサン・ホーク演じるグッドナイトもいい味出しているが、イーサン・ホークにしては物足りない存在感となっている。
意外と心に残っているのはアメリカン・インディアンのレッドハーベスト役のマーティン・センズメアーで、ガンマンたちの中で一人弓矢を武器に活躍する様子はインパクトが強烈だ。
しかし、何と言っても、マグニフィセント・セヴン、主人公の7人の男たちの中で最も大きな存在感を見せたのがギャンブラーのジョシュ役であるクリス・プラットだ。
ギャンブラーといういい加減な稼業を続けながらも、次第に正義と仲間との友情に目覚め、大人のタフガイへと成長していくジョシュの滅びの美学は実に素晴らしい。
彼は7人の中で最も大きな存在感で観客を圧倒する。
この映画を観るまでクリス・プラットという名前はほとんど知らなかったのだが、この映画を観て、彼がたぐいまれな素晴らしい才能を持った俳優であることを確信した。
映画俳優の中には、そういうたぐいまれな才能と存在感を持った俳優がいて、そういう俳優は画面に出てくるだけで作品をワンランク上の作品へと変化させてしまう。
この作品の中で間違いなくクリス・プラットはそういう大きな役割を果たしている。
この映画は1961年に公開されたスティーブ・マックイーン主演『荒野の七人』のリメイクである。
僕が映画少年だった頃、『荒野の七人』を観て、スリリングな展開と描かれている素晴らしい人間性に心躍らせたものだ。
男たちの友情って素晴らしいと思ったし、正義を貫き、時にはそのために命を懸けるって素晴らしいと思った。
そして何よりもこの映画の舞台であるアメリカって素晴らしいって思った。
しかしその『荒野の七人』は実は日本を代表する映画監督、世界のクロサワの『七人の侍』のリメイクだとのちに知った。
若かりし頃の僕があこがれ、心を動かされた『荒野の七人』は日本映画のリメイクだったのだ。
そうして今その『荒野の七人』はリメイクされ『マグニフィセント・セブン』となって公開されている。
世代や時代を超えて訴えかけてくる作品って素晴らしいと思う。
この映画のエンディングで、昔の『荒野の七人』でのテーマ曲が流れる。
あの音楽を聴いた時、一気に心は昔に時代をさかのぼった。
まだ若かりし頃へ。
新スタートレックのエンディングでもやはり同じ経験をしたが、こういうリメイクを通して昔の自分へとフラッシュバックできるのもまた映画の醍醐味なのだと思う。
最後に一言、この映画にはほぼ男たちしか描かれていないのだが、唯一描かれている女性エマにも注目だ。
彼女の魅力、僕はかなりエロさを感じたのだが、その魅力をぜひぜひ見てもらいたい。
実はこの映画の陰の立役者は彼女ではなかろうかと思わせるほどだ。
そのエロさに思わず目が釘付けになることも二度や三度ではなかった。
もしかすると、飛行機の上でこの映画を最後まで観ようと思ったのはエマのエロさのせいかもしれないとさえ思う。