『この世界の片隅に』をめぐる左と右の戦争

ヤフー映画のサイトのユーザーレビュー欄がえらいことになってる(笑)。

 

能年玲奈が声優を務める『この世界の片隅に』のレビュー欄で戦争が起こっている。

星1つの「左翼的」レビューと、そういう左翼的なレビューを攻撃する星5つ勢力との戦争だ(星5つ付けた人が全員その勢力ではなく、左翼的な星1つを攻撃する人はほぼほぼ星5つ付けてるという意味)。

星1つ勢は、このアニメーション映画が右翼的であると攻撃している。

この作品の舞台となった海軍の基地や兵器工場があった呉を被害者として描き過ぎだと非難している。

真珠湾慰安婦や中国への侵略を忘れたのか。

お前らは殺人に加担したんだぞ!

左翼の人たちが言いそうなことばかりで、「またこいつら思考停止に陥ってるわ」という気になる。

 

そんなことはどうでもいい。

それよりも、この作品を観た人はまず能年玲奈が自分の本名も使うことを許されず「のん」としてクレジットされていることに憤りを憶えるべきじゃないのだろうか。

これこそ現代進行中の人権侵害じゃないか。

 

作品については、実際に観させてもらったが、特に右翼的とかは一切感じなかった。

『永遠のゼロ』がいろいろと批判された時も感じたが、100人いれば、100通りの物語が生まれる。

それぞれがそれぞれを物語を語っていい。

それぞれがそれぞれにとって真実なんだから。

そしてその中で優れた物語だけが後世に語り継がれていく。

それを1つの物語に強制することなどファシズムだし、それこそがナチスドイツや第二次大戦中の日本が犯した過ちじゃないか。

ナチスや第二次大戦中の日本を批判する左翼の人たちが多様な言動を許さないというのは完全な自己矛盾だ。

この映画の思想が気に食わないというのであれば、自分たちの思想に基づいた映画を作ればいい。

『この世界の隅に』とかいうタイトルで作ればいいのだ。

でもきっと売れない。

左翼的言動が説得力を持たないがゆえに、今人々に訴えかけないのと同様に、リアリティーに欠けることの多い左翼的メッセージはなかなか人々に訴えかけないだろう。

 

話をこの作品に戻すと、僕はこの映画がとりわけ優れているとも劣っているとも感じなかった。

ただ淡々と主人公の女性の視点から戦争中の日常を描いている。

小説とは違い、わずか126分の映画ゆえに、残念ながら人を深く描き切れていない。

テーマも少々ぶれている気がするし、主人公のキャラクターも今ひとつつかみきれない。

君の名は。』と比べると、作品が持つ熱量が劣っているし、完成度においても完全に劣っている。

物語としてまとまりに欠け、テーマにぶれが見て取れるのだ。

だから僕は星3つくらいが妥当かなと思う。

 

というわけで特にこの作品について熱く語りたいことはないのだが、ヤフー映画のレビュー欄で戦争している左と右の人たちにはひとこと言いたい。

くだらない論争をしている暇があったら、能年玲奈の人権を守るキャンペーンでもしなさい!